私は2年前、カウンセリングを終了する際に、両親に宛てた送ることのない手紙を書きました。
今日は、2017年6月14日に私の母へ書いたものです。ちょいと加筆修正しております。
母へ
私をここまで育ててくれて、本当に感謝しています。ありがとうございます。
改めて、母親であるあなたへ伝えなければならないことがあります。
この手紙に書くことは、今までに私があなたに言ったことも少し含まれているかと思いますが、
あなたにこうやって手紙として伝えることは、これが初めてかもしれません。
この31年間、私が人知れず抱えてきた生きづらさ、対人関係の苦しみ、度々まとわりつく罪悪感、無力感、恐れ…
そうなってしまったのは全て私の責任であり、自分がダメな人間で未熟だと思い込んで生きてきました。
しかし、私が思い込み疑いもしなかったことが、実は“あなたたち両親に起因している”という概念に出会い、
私のなかで大きな衝撃が走りました。
現在の私の気持ちや考えを言葉にして、この手紙に記すことにします。
お母さん、私はいつからあなたの顔色をうかがって、怒られることを恐れて、
自分の本心をあなたに伝えることを諦めるようになったのでしょうか?
私自身の1番最初の記憶をたどると、もう弟が既に生まれていました。
まるで、私が生まれた時から弟が存在していたような感じなのです。
なので、私はあなたにたくさん抱っこしてもらったり、いっぱい甘えさせてもらえた時間がものすごく短すぎたように感じています。
子どもの頃、大好きなあなたを困らせたり、邪魔にならないようにしたり、
あなたに褒めてほしくて、認めてもらいたくて、我慢していた思いがあります。
「私はおねえちゃんなんかやりたくない。弟ばっかり甘えてズルい!私ももっと甘えたい」
「お母さん、大きな声で耳が痛くなるような声で怒らないで。怖い顔しないで!怖くて何も言えなくなるよ」
「どうして私の名前を呼ぶとき、間違えて弟の名前を呼ぶの?ひどい…傷ついたよ。本当は私のことなんかどうだっていいんだね?私のこともちゃんと見てよ、寂しいよ」
「なんで泣いちゃダメなの?私だって好きで泣いてない。頭ごなしに泣くなって言うな!」
「今遊んでいる最中なのに、お母さん邪魔してこないで!いつも良いところで終わらせないで!バカ!!」
「弟がやってるスポーツなんか興味ない!高学年なんだから1人で留守番出来る。お父さんと2人で見に行けばいいじゃん!アホ!!」
幼いうちから、お姉ちゃんとして「良い子」としてふるまわないと、
あなたに怒られたり困った表情をされるのはすごく悲しかったし、怖かったです。
あなたに褒められたり、注目されるには、あなたの気持ちや意向をくみ取って、行動しないといけない…
そう考えるようになりました。
子どもだった私は、言葉にして表現する術を持ち合わせていませんでした。
あなたに伝えることよりも、あなたに嫌われてしまうことが何より恐ろしかったのです。
お母さん、私はいつからあなたの“愚痴聞き役”に徹するようになったのでしょうか?
私にとってショックだった出来事は、
小学2年生の頃、家族みんなでお昼ご飯を食べている時に、夫婦喧嘩を見せられたことです。
大人になった今でも、その記憶は鮮明に覚えています。
あなたたち2人が言い争っている時間は、苦痛と心の傷を負わせ、
「夫婦とはこういうものである」という誤った形を無意識に刷り込まされていきました。
2人が互いにいがみ合う姿、隣家まで聞こえそうなくらいの大声、テーブルをたたく音…
私は生きている心地がしなくて、食事をするどころではありませんでした。
悲しくて泣きたいけれど、あまりの怖さに身体が固まって動けずにいました。
この出来事だけでもしんどかったのに、さらに私の心を傷つけたあなたの一言は
「お父さんとお母さん、どっちが好き?どっちが良い?」でした。
それを聞いて私は「お母さんは、お父さんのことが嫌いになってしまったんだ」と察しました。
夫婦が別れる…離婚するという意味を、当時小学2年生だった私はなんとなく理解していました。
同じクラスの女の子に、お父さんが居なかったからです。
私に聞いてきた時の、あなたのどこか辛そうな無理に笑っているような表情が、あまりにも痛かったです。
その時私は「お母さんがいい」と選んで言ったのか、突然聞かれて黙っていたかのどちらかだったと思います。
いずれにせよ、内心は両親のどちらかを選ぶことは出来ませんでした。
「お父さんとお母さん、早く仲直りしてほしい。お互いに好きあって居てほしい」
「家族が離ればなれになってしまうのはいやだ」
「お父さんのことあまり好きじゃないけど、ひとりぼっちにしてしまうのはかわいそうだ。でもお母さんをひとりにしたくない」
「弟と一緒に遊べなくなるのかもしれない。もしかしたら、私だけひとりになるのかも…どうしよう」
両親のどちらかを選ぶと、もう1人が寂しい思いをすることになります。
寂しい気持ちを味わうことはすごく辛いのだと、子どもながらに理解していました。
だから、私は誰にもそんな思いをさせたくなかったのです。私は、誰も傷つけるようなことはしたくなかったです。
その頃を経てから、あなたは何度かお父さんや祖母と衝突することがありました。
あなたの口から出てくる2人への不満、苛立ち…
「もっとこうしてもらいたいのに」という思い通りにいかない思いや、
相手をコントロールしたい欲を含んだ愚痴などを私に垂れ流すようになりました。
当時の私は、あなたが哀れでかわいそうだと思っていました。
あなたは母として、妻として、嫁として、自分のことよりもまず家族の為に尽力してきました。
お父さんや祖母に認めてもらえず、“嫁としてそれが当たり前だ”というような反応が返ってくるのを見たり聞いたりしていると、
私は何とも言えない気持ちで満たされました。
そして、私もあなたと同じく、2人に対して不満や怒りをこじらせていきました。
報われないというか、なんてやりがいがないんだろう…
それでもあなたは、複雑な感情を抱え、それらを押し殺し、言いたいことをグッと我慢してきたかと思うと、胸が痛くなりました。
だから、私はあなたが我慢し過ぎて辛くなったり、疲労がたまって倒れたりしないように、
少しでもガス抜きさせてあげたいと思うようになりました。
ネガティブな思いなどを吐き出すことで、あなたの気分や心がスッキリと晴れるようにしたい、
愚痴でも色々な話を聴くことを、私はあなたに対して努めてきたつもりです。
そうすることで、あなたが幸せになって笑って過ごしていけるならそれでいいと、心から願っていました。
でも、本音を言うと、私はあなたから多くの感情や固定観念などを背負わされてきたので、ものすっごく苦しかったです。
「長男嫁になると、お母さんみたいに難儀な思いをしなければならないのか」
「夫は、嫁ではなく母親の味方をする。頼りになれないのか」
「嫁姑はこんなにめんどくさいのか…分かり合えないのなら、結婚って疲れそうだ」などなど、
あなたの愚痴のせいで、私のなかにある結婚観、家族、親戚はマイナスなイメージでしかないと植え付けられました。
「言いたいことがあるなら私に言ってこないで、直接お父さんや祖母に話してよ!」
「もう疲れた!!あなたを慰めたり、吐き出させようと頑張ることが私はお母さんにとって愚痴を聞くためのロボットだと勘違いしてないか?!ふざけんな!私を都合の良い道具として扱ったこと許さない!!」
「離婚したいならすればいいと私が言ったら『あんたは嫁に行くからいいけど、弟がかわいそうだ』とか、子どもを言い訳にすんなボケ!!」
「私はお母さんがどうしたいのか聞いている!ていうか、私のことより弟の心配?弟の方が1番大事なのね… 超ウザイ。こんなことで私を巻き込まないで」
「結婚できずにいまだに独身でいるのお前ら両親のせいだからな」
上に書いてある私の本音は、学生の頃と大人になった現在のものが入り混じっています。
あなたの幸せを願って、今まで自分なりにやってきたつもりでしたが、
私がどんなにそれを願って頑張ったとしても、あなた自身を変えることは出来ないのだと気づきました。
わたしがあなたを幸せにしようとしなくていい… 自分のエネルギーをあなたではなく、自分の為に使おうと決めました。
あなたが私にしてきたことによる影響は、大人になった今でも続いています。
・人に甘えたり、頼ることが上手く出来ない
・人の顔色、視線、言動、が気になり過ぎる
・人にどう思われているかにとらわれ過ぎて、相手に合わせて自己表現出来ない
・孤独、寂しさ、空虚感がつきまとう
・自分が楽しむこと、誰の役にもたてないことへの罪悪感が湧く
・嫌なことに「NO!」と言えず、我慢ばかりを選ぶ
・人の争い、大きな音や声、怒鳴り声、誰かがいがみ合っている場面(自分がその当事者である場合も同様)を見ると、すごく動揺してしまう
・自分が嫌いで自分を責めてしまう
あなたから背負わされた心の傷がもたらした苦しみは、これらのようなことにあるのです。
これらの影響によって、学校生活での友達や先生とのコミュニケーションをする場面、
職場での上司や同僚とのやりとりや、恋愛における異性と関わるなどの対人関係に悩み苦しみました。
相談したり、悩みを打ち明けても、理解を得られないことや、
様々なアドバイスをもらっても、同じ負のパターンをくり返す事が続き、
1人でどうにかしようと抱え込んで、ストレスを上手く対処しきれずに、自分にとって不本意な結果を出してきました。
多かれ少なかれ、ほとんど不完全燃焼で終わるために、
自分の感情をコントロール出来ずに爆発させてしまった時は、伝えきれなかった不満や思いをこじらせたりしました。
私はあなたに何度か八つ当たりしたことがありました。
あなたは、これらのことについて
「何でもかんでもお母さんのせいにしないで!」
「弟だけ特別扱いしていない。あなた(私)のこともちゃんと可愛がったよ」と否定して認めなかったり、
「家で起きたことの話をしているだけなのに、これからは愚痴も何も喋るなって言ってるの?」とか
「愚痴ることの何がいけないの?」と、あなたは悲しそうに同情を誘うかのように言いたくなるでしょう。
実際に、私に言ってきたことがありましたね。
ですが、無力で主張する力や術が乏しく、幼かった子どもだった私に、家事・育児で疲弊していた・していない、
“私の為を思って”愛情を注いだとか関係なく、
私の心に傷を負わせてきた事実を、親であるあなたに伝える必要があると私は考えたのです。
そして、私に植え付けられたトラウマが、
大人になった現在に至っても、影響を及ぼし続けているという事実を、親であるあなたに受けとめる責任があります。
そういうわけで、私が背負わされてきた苦しみの責任は、あなたに全てお返しすることにします。
これからは、本来私が持っている自分らしさを取り戻し、自分を育てなおしていくことをしようと心に誓いました。
大人になった私が、母親であるあなたに望むことは、
「甘えさせてほしい」とか「私のことをもっとわかってほしい」ということではありません。
1つは、愚痴を延々と私に垂れ流すことは、なるべくやめていただきたいということです。
あなたのストレスや辛さは、あなただけが管理することが出来ます。
ストレスの対処法は、あなた自身でどうにかしてください。
ですが、もしあなたが「この悩みをどうしたら解決出来るか?改善策はあるか?」と模索しているのであれば、
私はあなたの話を聴き、私なりにアドバイスや知恵をあなたに与えることが出来るかもしれません。
しかし、何の解決を求めるわけでもなく、ただ話を聴いてほしいと言うのであれば、
私はこれ以上あなたの話を長々と聴くのは嫌です。あなたの存在が重く感じるし、すごくしんどいです。
なので、私の状態が余裕あるかないかによって、こちらからスパッと切り上げることにします。
また、あなたの体調や不調についても、ストレス同様あなただけがコントロール出来ます。
残念ながら、私にはどうすることも出来ません。
私がマッサージしたとして、一時的に身体の痛みが和らぐとしても、完全に治すことは無理です。
仮に、病気や不調について私が色々調べて、これが良さそうだよとあなたに伝えたとしても、
あなたは本気で自分の不調に向き合い、治そうとするでしょうか。
私の目には、自分の体調をもっと良くしようとしていないように見えます。
本当に辛いなら、医師や専門家に相談したり、身体のメンテナンスをしてもらうなど手段があります。
それをやるかやらないかは、あなたが決めることです。
あなたの不調の辛さは察していますが、100%分かち合うことは出来ません。
私の想像以上の痛みや辛さが多くあると思います。
しかし、あなたが「痛い」「辛い」と私に言っても、残念ですが正直どうすることも出来ません。
私に愚痴ったところで、治るものではありません。
あなたに望むこと… 2つ目は、あなた自身の幸せを優先し、追及してほしいということです。
あなたは、自分のことよりも他者を第一に優先してきたと思います。
あなたの父や母(私の祖父母)、あなたの兄や姉、結婚してからは夫や姑、私と弟、愛犬のこと、
年中行事などをしっかり真面目に努めてやってきています。
私がそれらのことに対して、文句や何も言うことはありません。
私は、あなたが母として、妻として、女性として、十分に努力してやってこられたのだと認めています。
誰が何と言おうと、非難してこようとも、それは揺らぎません。
先ほど書いた「あなたをかわいそう」と思っていたことを撤回します。
これはあなたに対して、すごく失礼なことであるし、あなたを否定する意味を含めている気がしたからです。
誰かの為ではなく、あなた自身の為に生きていってほしいです。
あなたのペースで動いていいし、休んでもいいのです。
妻や嫁、母としての役目を一旦置いといて、自分が好きなことや楽しいと思えることに、エネルギーを使ってください。
今後、私はあなたを喜ばせたり、あなたのストレスを発散させようと頑張ること、
あなたの不調をどうにかしようとか、心配して色々口出しすることはもうやめます。
私も私なりに、自分らしく生きることに全力を尽くします。
あなたがどう感じ、どう思おうが、それはあなたの勝手です。
これは私の人生です。どう生きてこようが、私の自由だからです。
しかし、私が望むことを拒否し、私の人生に首を突っ込んで色々口出しをしてくるのであれば、
私はあなたとは一線を引いて、距離をとろうと考えています。
たまに会ったり、会話するとしても、表面的な会話をする程度にとどめておきます。
私があなたに望むことを書いてきましたが、押し付けることはしません。
これまでと変わらず、あなた自身がこのままでいいのなら、どうぞそうしてもらっても構いません。
それはあなたの自由です。
この手紙を読んで、様々な感情がぶり返しているかと思います。
もし、あなたが「親になんて手紙をよこしてくれた!」とか
「こんな娘もういらない」「親に対して冷たい…育ててもらった恩を仇で返すの?」と考えているのであれば、
私との縁を切ってもらっても構いません。
私は、そういうリスクを冒すことを覚悟の上で、あなたへ手紙を書きました。
私は誰かに依存して生きていく生活を歩みたくはありません。
誰の人生でもない、私の人生を、私がしっかり責任を持って生きていきたいと、自分の意思が固まりました。
私は、未来に出会うであろう大切なパートナーや、愛する子どもに対し、自分の苦しみや負の感情を巻き散らしたくありません。あなたたち夫婦、その前の家族から背負わされてきた“負の連鎖”を私が断ち切ります。